手紙
手紙を手で書くことがいつからこんなに億劫になったのか。
英語圏に長く生活しているわりには英語もさほど上達してない。
「日本語がどうも書けなくなって・・」いう言い訳はまったく通用しないことはよくわかっている。
小学生の頃、従妹の仕事仲間の男性と手紙のやり取りをしていた。
私の稚拙な手紙に彼は毎回丁寧な返事をくれた。ブルーの万年筆で縦書きに書かれた綺麗な文字。封筒は白の縦型。よく覚えている。
この男性と従妹は当時20代の半ばだったと思う。二人は恋人同士もなければ婚約者という関係でもなく、実際この二人はその後まったく別の人と結婚している。彼は子供好きだったのか、寂しかったのか、暇を持て余していたのか…いや、もしかしたらやはり従妹に仕事の同僚以上の気持ちがあったのかもしれない。
妹と一緒に梨狩りに連れて行ってもらったり、ドライブに行ったり。従妹と一緒だった時もあるが、私と妹だけの時もあった。
今から思えば不思議である。
地方出身でひとり住まいの彼は、私達が住んでいた狭い社宅にも週末よく遊びに来てくれた。小学生の女の子二人、今なら親として警戒したかもしれない。しかし、私の両親はこの男性におおいに好意を持っており、心から信頼していたのだろう。
彼が結婚してからも奥さんと一緒に我が家を訪ねてくれた。私は彼の奥さんのことも大好きだった。
よい時代。
その男性におよそ半世紀ぶりに先日手紙を出した。従妹が最近その男性と久しぶりに再会する機会があり(素晴らしい!)、私に彼の住所を教えてくれた。
メールアドレスではなくて。
書きたいことが沢山ある。まずパソコンで下書きをしてから便せんに清書をするつもりでいた。しかし何度試みても、便せんへの清書はえらく時間がかかる。そして情けない乱筆。いや、乱筆どころのレベルではなく、もう泣きたくなった。
結局はパソコンに打ち込んだ下書きをそのままクリスマスっぽいイラストが入ったレター用紙に印刷して、署名のみ直筆で書いて封筒に入れて投函。住所と宛名は辛うじて手で書いたけど。
自分のことばかり書き連ねた、しかも活字の怠惰な手紙を送っておきながら、私は彼からの返信を期待している。小学生の頃に心躍らせながら彼の手紙を楽しみにしていたあの頃のように。
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