先日、親族の婚礼に参列した。
南半球オーストラリアのメルボルンは秋。
晴れわたる爽やかな秋空のもと、風光明媚な田舎の牧場にて人前結婚式を挙げた後に
近くの小さなホテルのレストランを貸し切って和やかで気取らない披露宴が開かれた。
二人の新しい門出を心から祝福する親しい人だけが集まった、そんなあたたかい結婚式と披露宴だったように思う。
華美ではないけど、 ケチらず質素過ぎない。まったくあの二人らしい。
披露宴もそろそろお開き・・の頃、美しい花嫁がこじんまりとした会場の隅っこのテーブルでひとり黙々と何かの作業しているのを目の端でとらえた。
え? 花嫁さんが何してんねん?
そっと近寄ったら・・・
会場のあちこちに綺麗に生けられたお花をゲストに持ち帰ってもらおうと、なんと花嫁自らその段取りしてせっせとラッピングまでしていたんです。
「ちょっと、ちょっとオ〜 花嫁さんがそんなことせんでもええよ! 私がするから。あっちで花婿さんと一緒にお客さんに挨拶し〜」
と言うたけど、結局手伝わせてもらえなかった。
二人はあるワイナリーの高級レストランで以前一緒に働いていた。
それが出会い。9年前のこと・・・
新婦は当時学生アルバイトで、新人の指導係だった新郎は新婦に手取り足取り接客業務のイロハを教えたとのこと。
やがて二人は恋に落ち、長い交際期間を経て結婚に至ったというわけ。
当時一緒に働いていた高級レストランは週末など披露宴の貸切会場として使われる。
ずいぶん前に私はオットと数回そこで食事したことがある。
確か私の誕生日か結婚記念日だったかな?
雰囲気も素敵だしもちろんお料理も美味しいんだけど、お値段も当然すっごくお高いところ。
一般ピーポーの我々が決してちょくちょく行ける場所ではない。
その以前の二人の勤め先で、豪華な宴が終わっ後に会場に飾られた花がそのまま大量に残されるのを見ていつも「もったいないなあ」と彼女は思っていたとのこと。
彼女のようにお花の持ち帰りを希望する従業員達が自宅へ持ち帰っても、それはほんの一部の限られた量。残りは廃棄されていたらしい。
「お花、お持ちになりませんか?」
披露宴などに出席したお客さん達に最後声をかけても、ほとんどの人があっさりと
「ノー サンキュー」やったらしい。
「リッチな人はお花がもったいない・・なんて思わないんかなあ?」
以前二人からこの話を聞いたことを思い出した。
自分達の晴れの日には披露宴で飾ったお花を自分で包んでゲストに持って帰ってもらう。
これを自分でやらないと気がすまへんかったんやろう、健気な花嫁。
この日もらった綺麗なお花を丁寧に生けて居間に飾っている。
お花見ながらあの日眩しいほどに美しかった花嫁の姿をまた思い出す。
そして挙式の後半、感極まって誓いの言葉が涙で途切れ途切れやった新郎のことも。
新コロナウイルスによる度々のロックダウンのせいで、あのふたりの婚礼はこの2年で3回も延期になってね。
やっと実現したおめでたい日やった。
末永くお幸せにね。