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2020年2月27日木曜日

がらくた市

近所のフットボールグランドで月に一度開催されるがらくた市に行ってみた。
がらくた市というか、のみの市というか、ガレージセールというか、フリーマーケットというか。
レトロ雑貨を売る人、園芸業者、旬の野菜や果物を売りに来ている地域の生産業者などなど。
そしてガレージに眠っているあれこれを売りに出してるグループ出店者もいる。
とにかく多種雑多で楽しい。

この日、私が買ったのはオットマンと古い鉄のアイロンのふたつ。

オットマンとは椅子やソファーの前に置いて足を乗せる小さなスツールのこと。
黒い蜘蛛の小さなステッカーが貼ってあってね。それがちょっと気になったけど、状態は大変よろし。
それより何より5ドル(350円くらい)は超お買い得。
ソファーセットを買い替えてこのオットマンの色がインテリアのコーデイネイトに合わなくなったから手放すことにしたって。愛想の良い出店者がそう言うてはりました。
蓋がぱかっと開いてね、小さいけど収納機能があることも気にいった。

そしてヴィンテージの錆びた鉄のアイロン。
丈夫で重いからドアストッパーに使おう。
値段の表示がなかったので「いくらですか?」と出店者のおっちゃんに聞いたらね
「いくらなら買う?」って。質問を質問で返された。
10ドル(700円くらい)って言うてみたら、おっちゃん首をタテに振ってくれた。
どんな人がどんなお洋服にアイロンかけてたんやろう? 
こんなに重いアイロン、さぞかし使いにくかったやろうなあ・・・
この当時はまだ一般家庭に電気がなかったんかなあ? 
そんなあんなを考えたりして。

あ、ところで。
オットマンの黒い蜘蛛の小さなステッカーは蜘蛛じゃなくてかわいいタコでした。
帰宅して自分の部屋にオットマンを運んでから気がついたんです。
ホンマに目悪いなあ、私。
近くも遠くもよく見えへんのです、最近。

スルスルとこの古いステッカーは爪で剥がすことができてバンザイ!
ささやかな幸せに浸る週末の午後。

2020年2月22日土曜日

弁当箱

この日は弁当持ちで朝から外出していた。
ある公園でお弁当広げるつもりやったけど、酷暑日のため屋外でのランチは断念。
冷房がよく効いたショッピングセンターのフードコートでお弁当を食べてたら、近くに座ってた赤ちゃん連れの女性から声をかけられた。

「日本人ですか?」
「はい・・・」と私。

感じの良い女性。

彼女が高校生の時に交換留学生として横浜に1年住んだことがあるとのこと。
ホームステイ先のホストマザーが毎日美味しいお弁当作ってくれたらしい。
そして、その弁当箱がこれによく似てるって。

「ホストマザーに本当によくしてもらって・・・」

「日本語、もうだいぶ忘れてしまったわ。」と言いながらも日本語と英語と混ぜ混ぜで
横浜で過ごした時の楽しかった思い出話を聞かせてくれた。
ホストファミリーとは今でも近況を伝え合ったりしてお付き合いが続いているって。

それを聞いて私はとても嬉しかった。

ずいぶん前に日本から語学研修やら何やらでオーストラリア家庭にホームステイする学生達に関わる仕事を請け負っていたことがあった。
日本へ帰国する日、見送りに来たホストファミリーと抱き合ってワーワー泣いて別れを惜しむシーンを何回見たやろう?
「女優か?あんたらは・・」みたいな女子学生が大変多かったことを思い出す。
空港へ向かうバスが出発するや否や、涙などすぐに乾いてキャッキャ騒ぐ女優達。
そんな女優達に限ってホストファミリーとはそれっきりのケースが当時は多かったなあ。
後にホストファミリーからそれを聞くと、胸が痛んだ。

あの女優達、今頃どうしてるんやろう?
悲劇のヒロインになっていないことを祈る。

2020年2月17日月曜日

妊婦さん

日曜市で買い物中に立て続けにふたりの妊婦さんに会った。
どちらもかなり出産の日が近いと思われる大きなお腹の妊婦さん。

ひとりは・・・ とても背が高くてヘアもメイクもバッチリなレトロっぽいオシャレさん。
しかし、伸び縮みする素材やからってそのワンピースドレスはちょっとどうなん?と言いたくなるほどお腹のあたりが超ピッチピチでおへその形がシースルー。
きっと妊娠して体型が変わる前から着てはったワンピースドレスをそのまま着てはるんやろう。
これはマタニティードレスじゃないね。

もうひとりは、でっかいお腹丸出し。
この日は確かに30度近く気温が上がった夏日だったけど。
お腹に赤ちゃんの絵が描いてあった。
大変リアルに描かれていたのでじーっと見てしもうた。

この人、絵上手やなあ。
話しかけずにはいられんかった、私。

3歳のお嬢ちゃんに今お腹の中の赤ちゃんがどういう状態で入っているのか説明するために描いたとのこと。

あれ、少し前にこれと似たエピソードをこのマンガで読んだ覚えがあるなあ。
ニブンノイクジ 第2子スタンバイ編


「今朝、家出る時はTシャツ着てたのよ。ところがここへ来る途中にあちこち上半身が痒くてね。仕方ないからTシャツ脱いだの。」

なんと大らかな。

この暑い時期に腹帯はしんどいやろうけど、お腹の中の赤ちゃんがちょっと心配になる。
妊娠5ヶ月の戌の日に”妊婦帯”を巻いて安産祈願する。
日本の古くから伝わるその風習をチラッと思い出した。

いつの頃からやろう。
妊婦さん見るとなんだかぽわ〜んと幸せな気分になる。
若い頃は子供が嫌いだった。
知り合いや親戚などに赤ちゃんが生まれてお祝いに行った時も、生まれて間もないふにゃふにゃの赤ちゃんを抱っこしたいとは特に思わなかった。
新生児や乳幼児に触れるのは苦手だったなあ。

初めての出産を間近に控えて産休に入った友人に明日久しぶりに会って食事する。
前回彼女に会った時、彼女のお腹はまだぺちゃんこやったっけ。
明日、ぽわ〜んどころか私はもっと嬉しい気分になるやろう。
もうすぐ生まれてくる彼女の赤ちゃんに会うのをウキウキと心待ちにすると同時に、彼女の安産を願ってやまない。


2020年2月15日土曜日

待ち時間

バスの停留所でも電車の駅のプラットホームでも郵便局の列に並ぶ時も、とにかく最近はちょっとした待ち時間に携帯電話を手に取る姿が一般的。

先日、病院の待合室でひとりも携帯電話を手にせずに子供向けのテレビ番組をボーッと観てたという珍しい状況の中に私は居合わせた。

そこには子供がひとりもいないのに。

「違うチャンネルに変えてもらえませんか?」とすぐ側にいる受付の人に言えばいいんだけど。
受付の人がひっきりなしにかかってくる電話の応対などで忙しそうだったことと、皆きっと「そのうち私の名前が診察室から呼ばれるだろう」と躊躇していたと思う。

雑誌も新聞も何もない待合室。

私はうっかり携帯電話を病院の駐車場に停めた車に置いたままやった。
以前は必ず文庫本か雑誌などをバッグに入れて出かけてたのに、財布と携帯電話しか持たなくなってからもう何年になるだろう? 

日本にいた頃の勤務先にしおりを集めるのが趣味の先輩がいた。
私の誕生日に毎年彼女が気の利いたしおりをプレゼントしてくれてたっけ。
会社を辞める時にも・・
今でもそれらは飾り箱に入れて大事にしている。

そうや、久しぶりにあの先輩に連絡してみよう。
確か今年あたり定年退職されるはず。
オーストラリアっぽいレアなしおりを探してプレゼントしよう。



2020年2月12日水曜日

田舎の郵便受け


日本から農業研修に来た学生たちを連れて田舎に行った時のことを懐かしく思い出した。
あの時、バスの運転手さんは首をかしげてたっけ・・・
写真を撮るほど何が珍しいの?って不思議に思ったんやろうね。

田舎をドライブすると一ヶ所に複数の郵便受けがまとまって道路沿いに設置してあるのをよく目にする。
これは郵便配達員の手間を少しでも省いて労働時間を短縮するため。

田舎の農家と酪農家がそれぞれの郵便受けを家屋の玄関先に設置したら、郵便配達に
えらい時間かかるもん。

ミルク缶に乳牛の模様をペイントした郵便受けがあったりして、個性的な郵便受けを田舎で見るのは今でも楽しい。



2020年2月6日木曜日

迷い人


ピンポーンと玄関のベルが鳴った。
ご高齢の紳士が玄関に。

何となく困った様子というか、無表情で目がうつろ。
そして帽子を手に持ったまま無言・・・
額にはびっしょりの汗。

もしかして自宅がわからなくなった?
通い慣れた近所のスーパーから帰れなくなる認知症の人の話を以前にどこかで聞いたような気がする。

でも、この紳士は「道に迷った」とはまだおっしゃっていない。

当たり障りなく
「お訪ね先の住所、わかりますか? お手伝いしますよ。」と私。
しばらーくの沈黙の後に
番地と通りの名前をつっかえつっかえこの紳士が・・・

しかし。
うーん、この近くではなさそう。

よっしゃ。グーグルマップで調べてみよう。
「少しここでお待ちくださいね。」とこの紳士に告げて家の中へ入ろうとしたその時、
家の前にゆーっくりと車が停まった。
そして助手席側の窓がウイーンと下がって運転席から女性がこちらに向かって叫んだ。

「お父さん!! 良かった〜 ここにいたのね。」

娘さんやった。
車から降りてきてサングラスをはずしながら
「すみません。ご迷惑かけて。助かりました。」

もう少しで警察に届けようと思ってたところだったと娘さんが・・・
ご家族に何も言わずに家を出たまま、帰ってこなかったとのこと。
心配してご家族3人で手分けして車で探しておられたらしい。

気の毒過ぎて詳しく聞く気になれなかった。

すぐに娘さんは電報のような手短な言葉でお父さんが無事だったことをご家族のどなたかに携帯電話で伝えて、また何度も私にお礼を言った。

「いや、まだ何もしてません・・・」と言いかけたところで
この高齢の紳士は黙って車の助手席に乗り込み、無表情のまま私に手を振ってくれた。

なんだか急に私はちょっとだけ泣きそうになった。
(泣かんかったけど。)

「いつかは私やオットもこうなるかも」と思ったから?
「無事でよかった」の安堵?
日本にいる90歳の父のことが咄嗟に頭に浮かんだから?

いや、どれも違うねん。

説明のつかない不思議な感情に包まれながら、私も手を振って娘さんが運転する車を見送った。

そうや、洗濯物干してる途中やった!