威圧的ナースについてはこちら
ご高齢のご夫婦が大きなスーツケースを横に置いて座ってはりました。
気さくな奥さんが、私に話しかけてきた。
手術するのは奥さんやて。
おばあちゃん「あなた、手術の後に何日入院するの?」
私「多分2〜3日。そちらは?」
おばあちゃん「こちらも同じ。うまく行けば今夜一晩だけかも」
ええ!! うまく行けば今夜一晩?
そんなでっかいスーツケースに何入ってるんですか? と聞きたかった。
てっきり1週間以上の長い入院生活とばかり思っていた。
私は下着の替えと洗面用具を入れた巾着袋しか持って来てない。
だって、病院の案内書にそう書いてあったから。
それもまだ病院駐車場の車の中に置いたままや。
オットは病院のカフェにコーヒー飲みに行った。
なんだか自分の持ち物が急にショボく思えて心細い。
天気のことやら、病院の駐車場料金が高いことやら、このご夫婦と話していたら携帯電話の呼び出し音が大音量で鳴ってね。
ご主人がズボンのポケットから携帯電話を取り出して、そっからの動作がちょっと笑えた。実際は笑わんかったけど。
おじいちゃん、まるでアツアツの焼き芋を両手で操るように携帯電話を右手と左手で交互にホイホイ。
携帯電話に不慣れな様子。
いや、最近新しい機種に買い換えはったんかなあ?
とっちらかった様子でやっと電話に出たんだけど、どうやら同時にスピーカーのマークを押したらしいのです。
電話をかけて来た人の声がこれまたかなりのボリュームで待合室中に響いてね。
電話が鳴るまでは静かな話し声だったこのおじいちゃん。
なぜかそのおじいちゃんの声が急に大きくなった。
別に聞きたくないのに、彼らの会話が私の耳に入るねん。
娘さん? お嫁さん? お孫さん? 相手の女性の声・・
電話切る間際に何度も「アイラブユー」と繰り返し言ってたっけ。
電話を終えるやいなや、名前呼ばれてこのご夫婦は立ち上がった。
待合室を出る間際に、奥さんが振り返って「グッドラック ラブ!」と優しく私に言うてくれました。
私もおばあちゃんに「ユー トウー」
おじいちゃんは無言で私にウインクして大きなスーツケース携えて部屋から出た。
何の手術なのか、最後までお互いに聞かなかった。
けれど、これから手術する人が私を励ましてくれてる。
待合室に一人残された私。
もしかしたら、あのご夫婦は普段携帯電話を持たずに生活しておられるのかも?
そんなことふと考えながら自分の名前が呼ばれるのを待ちました。
その後、このご夫婦には病院内のどこで会うチャンスもなく私は退院した。
あの日待合室でおじいちゃんはおばあちゃんの手をずーっと握ってはった。
寒い手術室 に続く
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